決算書確認のススメ|その会計処理と申告内容、本当に大丈夫ですか?

 鎌ケ谷市・船橋市の友田税理士事務所です。

 会計処理・税務申告を税理士に依頼している小規模法人の経営者、個人事業主の方は、「専門家に任せておけばいいや。自分は専門知識がないから見ても分からないし。」と思って、税理士から渡された申告書の控えや決算書をまったく見ないことが多いようです。しかし、それで本当に大丈夫でしょうか。先日、あまりにもひどい事例がありましたので、ご紹介したいと思います。
※フィクションでなく、すべて事実に基づいて記載しております。

1.事の発端
 1-1.法人の代表者からの相談
 1-2.担当者のミス?
2.ずさんな税理士業務
 2-1.デタラメな処理の数々
 2-2.デタラメな処理に対する税理士の対応
 2-3.修正申告もミスだらけ
3.税理士が負う責任と義務
 3-1.民法上の責任
 3-2.税理士法遵守義務
4.まとめ

1.事の発端

1-1.法人の代表者からの相談

 以前、鎌ケ谷市内のとある家族経営の法人の代表者から以下のような内容のお電話をいただきました。

「以前は会社に先代の代表者からの借入金がありましたが、それはすべて返済し終わっていて借入金はないはずなのに決算書を見たら先代からの多額の借入金が残っていることになっています。おかしいと思って税理士事務所の担当者に説明を求めたもののはぐらかされて、『なんとかします』の一言で片付けられてしまいました。専門知識のない自分たちが見てもよくわからないので、相談に乗ってください。」

 どうしてありもしないはずの借入金が帳簿上に存在しているのか、税理士事務所の担当者は確認しようともしてくれなかったようです。それだけでも十分にひどい話なのですが、これが発端となってとんでもない事実が次々と発覚することになります。

 ひとまず過去3年分程度の資料をお持ちいただき、確認してみることにしました。

1-2.担当者のミス?

 資料を確認したところ、数年前に法人で車両を購入したときに先代の代表者から多額の借入れをしたことになっています。代表者に確認したところ、「確かに車両を購入しましたが、借入れはしてません。既存の車両を下取りに出して購入しました。」とのことで、それに関連する資料は当時、税理士事務所の担当者に提示してあったとのことでした。ところが、下取りに関する処理が適切に行われておらず、下取車なしで新規に車両を購入したという誤った処理が行われていました。その誤処理の辻褄合わせのために先代の代表者から借入れを行ったものとして帳簿上の処理が行われていたようです。車両購入の経緯について、担当者が会社から提示された資料をきちんと確認しなかったうえ、会社側に問い合わせをすることもなく、独断で処理を行ったことがミスにつながったようです。

 車両を下取りに出したのであれば、その下取りに出した車両については売却処理をし、通常であれば売却益か売却損が出るはずです。また、下取車両は帳簿から消えるはずですが、下取車両は帳簿に残ったままで、その後も引き続き減価償費が計上されていました。代表者に「必要な資料をきちんと担当者に提示していたのであれば、すべての責任は税理士事務所にあると思います。担当者にこの件を伝えて対応してもらった方がいいと思います。」とお伝えしました。

 この時点では担当者の単なるミスだと思っていましたが…。

2.ずさんな税理士業務

2-1.デタラメな処理の数々

 その後、代表者から連絡をいただき、これまで依頼していた税理士事務所は信頼できないとのことで、以後は当事務所に業務をご依頼いただくことになりました。当事務所で業務を引き継ぐにあたり、過去の資料をあらためて確認させていただいたところ、次から次へとずさんな処理が発覚して唖然としてしまいました。間違い探しをしたわけではありません。業務の引き継ぎにあたって必要な確認をしただけにもかかわらず、売上げの架空計上・二重計上・計上漏れ、経費の過大計上・計上漏れ、資産・負債の過大計上・計上漏れ等々、車両の購入代金をすべて外注費として処理しているなんていうものもありました。20年近くこの仕事に携わっていますが、これほどデタラメものには初めてお目にかかりました。
※後日、さらに売上げの計上漏れや外注費の計上漏れ等々が発覚し、挙げ句の果てには、1ヶ月分の経費の領収書がすべて計上漏れになっていたなどという通常では到底あり得ないミスも発覚しました。

 誰にでもミスはありますが、これらはどう見てもミスで片付けられるレベルではありません。「どうせ見ても分からないだろうから、適当に片付けとけ」という感覚で業務を行っていたとしか思えない、本当にずさんでデタラメな処理が次々と出てきました。

2-2.デタラメな処理に対する税理士の対応

 代表者を通して前税理士事務所に対して上記のデタラメな処理のことを伝えていただき、修正申告をしてもらうことになりました。その際、税理士から「ミスを指摘していただければすべて対応します」というようなことを言われたそうです。会社からは税理士業務に必要な資料をきちんと提示していたにもかかわらず、税理士事務所側がデタラメな処理を行ったことが原因でこのような事態に陥っているのです。指摘されたところだけ修正するという姿勢はいかがなものかと思います。税理士事務所側の完全な業務懈怠(税理士として依頼者の信頼に応えて適正な業務を行っていない)であり、自分たちですべて見直して修正する責任があるはずです。

 また、この税理士は「自分は申告書にハンコを押しただけ」だと言っていたそうです。この発言はどういう意味なのでしょうか。「担当者(税理士資格のない事務職員)が会計事務処理から税務上の判断、申告書の作成まで行っていたので、悪いのはすべて担当者であり、自分は悪くない」とでも言いたいのでしょうか。そんな理屈は通るはずがありません。税理士法には税理士の監督責任が定められており、すべての責任は税理士にあります。もし、この担当者が申告書の作成まですべて行い、税理士がその内容をまったく確認せずに申告書にハンコを押して申告書を提出したのであれば、重大な税理士法違反行為(名義貸し行為)に該当し、懲戒処分が下される可能性すらあります。

2-3.修正申告もミスだらけ

 後日、代表者から修正申告が完了したとの連絡をいただき、修正申告書と関連資料を見せていただきました。あれだけのことをやらかしたのだから、今度はまともなものが出てくるだろうと思っていましたが、そうではありませんでした。書類ファイルの見た目だけは立派ですが、内容的には体裁が悪く分かりにくい…だけならともかく、おおまかに確認しただけで明らかに誤りがあることがわかるものでした。

 家族経営の決して大きくない法人ですが、修正申告により追加で納付した法人税、消費税等は計200万円を超えました。後日、延滞税の通知も来るはずです。今回は自主的に修正申告をしたので過少申告加算税は課されませんが、もし税務調査で指摘されていたら過少申告加算税も課されてしまうところです。この法人は資金繰りに余裕があったので事なきを得ましたが、ギリギリでやっている会社であれば死活問題になってもおかしくありません。

 代表者を通じて前税理士事務所に問い合わせたところ、やはり修正申告に誤りがあることが確認されました。結局2度目の修正(更正の請求)を行うことになり、最初の修正申告によって100万円以上を過大納付させられていることが判明しました。担当者だけがいい加減だったわけでなく、税理士からしていい加減な人物で、事務所全体がそういう体質なんだろうと感じさせる本当にお粗末な業務内容でした。

 代表者は「クリーンにやっていきたい」とおっしゃっている方で、不正を行う意図などまったくありません。それが納税者に代わって適正な申告を行うべき税理士によって、このような事態が引き起こされているのです。このようにずさんな業務を行っている税理士事務所が存在していることは、税理士として腹立たしく、また恥ずかしい限りです。

3.税理士が負う責任と義務

 税理士は関与先から受託した業務について一定の義務と責任を負っています。上記のようなひどい事例であれば、税理士に対して責任を問える場合があります。

3-1.民法上の責任

 税理士は契約に基づいて委任された業務を適正に行う義務があります。関与先側が税理士の業務に支障がないよう適切な資料提供などをしていたにもかかわらず、税理士側が専門家として適正な業務を行っていなかったのであれば債務不履行による民法上の責任が生じます。債務不履行により損害が生じていれば、損害賠償を請求することも可能です。税理士が損害賠償に応じず納得できないとなれば裁判ということになりますが、裁判までは抵抗があるということであれば、税理士会に紛議調停の窓口が設けられており、調停の申立てをすることも可能です(千葉県税理士会/紛議調停制度)。

3-2.税理士法遵守義務

 税理士は、税理士法により信用失墜行為の禁止、名義貸し行為の禁止、使用人等に対する監督義務など、遵守すべき義務があり、これらに違反しているようであれば懲戒処分が下される可能性があります。税理士法違反が疑われるような場合には所轄の税務署に相談してみるといいと思います。

4.まとめ

 専門家に任せているから大丈夫だと思わずに、決算・申告の後には申告書や決算書の内容をおおまかにでも確認してみることをおすすめします。ご紹介した事例の代表者の方も、担当者に不信感を持ちながらも「専門的なことはまったくわからない」と考え、決算後に申告書や決算書を確認してみることもなかったそうです。それがちょっとしたきっかけで決算書を見てみたら疑問点が生じ、それが発端となり上記のようなことが判明しました。

 上記事例では売上げの計上漏れ、経費の過大計上が大きかったため、本来納付すべき税額よりも少ない税額で申告していたことになり、結果として、修正申告による追加納付が発生しました。もし逆に売上げの過大計上、経費の過少計上のほうが大きかったとしたら、本来納付すべき税額よりも多くの税額を納付させられていたことになります。申告期限から5年以内であれば、更正の請求により納めすぎた税額を還付してもらうことができますが、5年を過ぎてしまえばそれもできません。

 多くの税理士事務所は適正な業務を行っているはずです。しかし、ずさんな業務を行っている税理士事務所が存在するのも事実です。申告書や決算書を見て、疑問点があったら担当者や税理士に質問してみてください。月次処理や決算処理時の対応に不満があればぶつけてみてください。その際の対応によってきちんとした事務所なのか、そうでないのかのひとつの判断材料になると思います。

<追記>

 上記事例の税理士事務所は船橋市にある税理士法人です。この記事を書いていて気になったのでgoogleで「船橋 税理士」で検索してみたところ、良いクチコミが多数あるものの、船橋、市川、松戸、柏など近郊の他の税理士事務所と比較して突出してクチコミ件数が多く、それがすべて1年以内に集中しているというかなり不自然な状態でした。

 この税理士法人のホームページによると、

船橋市内で40年以上にわたり、所得税、法人税など累計10,000件以上の税務相談・申告を手がけてきた税務・会計のプロフェッショナルです。常に正しく確実な税務申告を実践し、お客様から安心感・信頼感をいただいております。

 だそうです。あまりの厚顔無恥に呆れて物も言えません。みなさまお気を付けください。

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